自社のデータは自社で決める:CROに対して適切な臨床試験プラットフォームを打診すべき理由
選択肢が与えられるのであれば、ほとんどの治験依頼者(スポンサー)は、自らのデータに対する管理権限や可視性をより高めたいと考えるでしょう。しかし、治験依頼者が臨床データ管理業務を外部委託(アウトソーシング)する湯合、それらの要素を左右するシステムの選定基準は、開発業務受託機関(CRO)に委ねられてしまうことが多々あります。CROがシステムを選定すると、治験依頼者はデータの収集、管理、および解析のプロセスを詳細に把握できなくなる可能性があります。これにより、治験依頼者は十分な透明性を得られないままCROのプロセスを信頼せざるを得ないという、「ブラックボックス化」のシナリオが生じてしまいます。
治験依頼者は、自らの試験に最適と思われるシステムを自発的に打診する権利を持つべきです。特に、データがどのように収集されるかについての治験依頼者の責任を強調した、昨今公開された「ICH E6 (R3)」ガイドラインを考慮すればなおさらです。すべての患者データヘの直接的なアクセス権がなければ、治験依頼者がデータ品質を効果的に監督(オーバーサイト)し、潜在的な問題をタイムリーに特定し、あるいはコンプライアンスを担保することは極めて困難になります。
治験依頼者が、CROの使用する臨床データ・システムを自ら決定すべき3つの理由は以下の通りです。
1. 治験依頼者のオーバーサイトとICH E6 (R3) の遵守
試験データヘの透明性とリアルタイムなアクセスは、確実なオーバーサイトとICH E6 (R3) への準拠を可能にします。この新しいガイドラインは、臨床プロセスと「データリネージ(データの系譜)」に焦点を当てています。つまり、治験依頼者は試験終了時の文書化(ドキュメンテーション)だけでなく、適切なタイミングで適切な意思決定を行うことにより、患者の安全性、データのインテグリティ(整合性・健全性)、トレーサビリティ、およびセキュリティを確実に担保していることを立証しなければなりません。
これを統制する2つの重要な原則が、「直接的な所有権(Direct ownership)」と「比例性(Proportionality)」です。直接的な所有権は、データマネージャーが複数の組織やグループを経由することなく、オンデマンドでデータヘ直接アクセスできることを義務付けており、伝言ゲームのような情報のタイムラグや齟齬を排除します。比例性は、リスクベースのアプローチを要求するものです。すなわち、品質管理、モニタリング、文書化、およびデータオーバーサイトの厳格さは、そのデータの持つリスクや重要性(CtQ:品質に重大な影響を及ぼす特性)に直接比例させるべきであるという考え方であり、不必要な業務を排除し、最もインパクトのある部分へと統制を集中させます。
CROパートナーからのタイムリーかつ正確な報告は、治験依頼者が効果的なオーバーサイトを行うために不可欠です。報告の遅れや不正確さは、プロトコル逸脱(治験実施計画書からの逸脱)や安全性に関する懸念などの重大な課題を覆い隠してしまい、試験の妥当性を危険にさらし治験依頼者を重大な規制上のリスクに直面させることになります。
2. 最先端の臨床試験システムがもたらす価値
医療機関(サイト)、治験依頼者、そしてCROの間のデータフローを運携させることで、バイオ医薬品企業とそのパートナーは以下のメリットを享受できます。
効率性の向上:自動化により、複数の外部および内部ソースからのデータ取り込み(インジェクション)が効率化され、治験依頼者は迅速かつデータ駆動型の意思決定を行えるようになり、全体的なデータ品質が向上します。
タイムラインの短縮:運携された臨床試験アプリケーションは、タイムラインの加速を支援し、遅延のリスクを最小限に抑えます。CROが旧来のレガシーシステムを継ぎはぎして使用している場合、高コストや期間長期化を招いている根本的な原因が治験依頼者から見えなくなってしまいます。特に古いEDCではカスタムプログラミングヘの依存度が非常に高いため、時代遅れのシステムがEDCセットアップ費用を高騰させる主な要因となっています。
医療機関(サイト)のエクスペリエンス向上:10,000人の医療機関(サイト)関係者を対象とした調査では、2025年に彼らが直面した最大の課題は「ログイン情報とパスワードの管理(72%)」であり、次いで「治験依頼者が選定するベンダー数の増加(71%)」でした。一貫性の欠如は患者へのケア能力を損なう恐れがあるため、医療機関側が複数のシステム使用を求められる試験の受託を断るリスクすら存在します。医療機関に対してシンプルかつ標準化されたシステム体験を提供できる治験依頼者は、競争の激しい市場において「選ばれる治験依頼者(Sponsor of choice)」としての地位を確立でさるでしょう。
CROがCTMS(治験データ管理システム)、EDC(電子データ収集システム)、および臨床データワークベンチを含む統合されたアプリケーション群を使用することで、治験依頼者は大きな価値を得られます。最新のEDCおよびCTMS機能は、網羅的なダッシュボードやレポートを提供し、治験依頼者が収集中の試験データヘ直接アクセスすることを可能にします。
グローバルCROのプリンシパル・クリニカルデータサイエンティストは、頻繁なレポート作成の重要性について次のように述べています。
同一の臨床プラットフォームを使用することで、治験依頼者とCROは同時にまったく同じデータを見ているという確信を持つことができ、より効果的なコラボレーションと信頼関係の構築が可能になります。Celerion社のグローバル臨床オペレーション部門バイスプレジデントであるステイシー・マクドナルド氏は、統合プラットフォームが治験依頼者との関係にもたらすメリットについて次のように語っています。
3. ベンダーとのパートナーシップとコストの予測可能性
治験依頼者がサードパーティ(CROなど)経由でシステムのライセンスを取得する場合でも、インハウス(自社契約)で取得する場合でも、Veevaのライセンスコストはベース料金と患者数に応じた料金で構成されているため、治験依頼者は長期的なコストを正確に算出でき、企業の成長や患者組み入れ(リクルートメント)の遅延といった要因もあらかじめ織り込むことが可能です。
「契約主体がCROであれ治験依頼者のVaultであれ、価格設定は同じです。そのため、Veevaを採用するという決断は非常にスムーズでした」と、ある特化型バイオ医薬品企業の臨床データマネジメント部門アソシエイトディレクターは説明します。同氏は、データ管理業務自体を外部委託しつつ、Veeva EDCのライセンスを自社に導入(インハウス化)した際のチームの経験について次のように述べています。「Veevaのマネージドサービス担当者は、私達や分析パートナー企業と非常に密接に連携してくれます。かつてサードパーティ経由でライセンスを利用していた頃に直面していた、医療機関でのトラブルやシステム構築(ビルド)における課題、あらゆる疑問に対して、今では即座に答えを得ることができるようになりました」
CROにVeevaの採用を打診する方法

治験依頼者の事例:Replimune社
ハイブリッド型のアウトソーシングモデルを採用しているバイオテクノロジー企業であるReplimune社は、システムの所有権(主導権)を自社で維持しつつ、データ管理業務のみをCROに委託しています。同社のチームは、治験立ち上げ時(スタートアップ時)の情報提供依頼書(RFI)および提案依頼書(RFP)において、Veevaシステムの使用を明確に指定しました。
「CROは基本的にシステムに対して非依存(アグノスティック)であり、通常はどのシステムであっても業務を遂行できます。自社のコアシステムを前提としてサービスを構築しているCROに対しては、最初のステップとしてアセスメントを実施し、Veevaシステムの採用に適合させるために必要な標準作業手順(SOP)の調整や変更点を洗い出します」─ レジーナ・ノレリ氏(Replimune社 臨床データ&サンプルマネジメント担当エグゼクティブディレクター)
治験立ち上げのかなり前の段階から、CROに委託するSOP、作業手順書、およびテンプレートを適切に整備するためには、治験依頼者とCROのデータ管理チーム間の強力なパートナーシップが不可欠です。「その検討プロセスに、Veevaを最初から同席させることをお勧めします」とノレリ氏は助言します。
「明確なプロセス、期待値、転ばぬ先のトレーニングを基盤として治験依頼者とCROのパートナーシップを構築できれば、品質と効率性の双方を満たす業務執行とオーバーサイトの仕組みをデザインすることができます」
治験依頼者の事例:TG Therapeutics社
TG Therapeutics社のアプローチは、データの整合性を維持するために、すべての試験において優先ベンダー(Preferred vendor)を固定するというものです。このバイオ医薬品企業は、ある第I相試験において3〜4種類の異なるEDCを並行して使用し、どれが最適であるかを評価していました。その際、新たにVeevaクリニカルプラットフォームを採用してパートナーとなったCRO企業から、Veeva EDCの使用が提案されました。
「社内チームやVeeva EDCを使用した医療機関(サイト)から多くの好意的なフィードバックが寄せられ、それがこのCROとのパートナーシップをさらに深める契機となりました」─ ダニエル・ゲイ=ベトン氏(TG Therapeutics社臨床ベンダー&プログラムマネジメント担当アソシエイトディレクター)
同社の手法は、入札(コンペ)の段階でCROに対して彼らの優先ベンダーがどこであるかを尋ねることです。再入札の際には、TG Therapeutics社側が使用すべきシステムを明記し、特定のEDCや中央測定機関(ラボ)の費用見積もりを取得するようCROに打診します。「何が最適であるかを見極め、それを追求することは私たちの義務です」
TG社はまた、Veeva EDCを自社契約(インハウス化)にすることで得られる潜在的な効率性の向上についても検証したいと考えていました。「その決定を下した以上、他のCROパートナーに対しても、今後はこのシステムを使用したい旨を伝える必要があります。私達にはデータを正しく管理する権限と義務があります。ですから、CROに対して『業界標準であるVeeva EDCを使いたい』と伝えることは当然の権利であり、これまでにCROから強い反発を受けたことは一度もありません」とゲイ=ベトン氏は説明します。
TG社において臨床データの管理とオーバーサイトの強化を強力に後押ししているのは、トップダウンで推進されている「インスペクション・レディネス(規制当局の査察への常時備え)」の取り組みです。「試験から得られるデータは、他ならぬ自社自身のデータなのです。規制上の観点からはもちろんのこと、ビジネス上の観点からも、最高のデータ品質を求めるのは当然のことです」
CRO example: Indero
ほとんどのCROは事前に検証されたシステムベンダーのリストを抱えており、自らの経験やプロトコル、試験の特性、予算に基づいて治験依頼者にソリューションを推奨します。Indero社のバイオメトリクス部門シニアディレクターであるエリック・ハーディ氏は、システム選定におけるチームの協調的アプローチを次のように説明します。「私たちは常に治験依頼者の要件を考慮し、当社のビジネスデベロップメントチームが密接に連携して彼らの好みを理解するよう努めています」
治験依頼者が自らベンダーを管理することを選択した場合、ハーディ氏のチームは徹底的なリスクアセスメントを提供し、その結果を直接議論します。同氏はさらに次のように付け加えます。「システム間の統合は、私たちにとって極めて重要な検討事項です。リスク評価の一環として、潜在的な統合の課題を強調することがよくあります。Veevaでの経験を活かし、治験依頼者がベンダー選定について十分な情報に基づいた意思決定を行えるよう支援しています」
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システムに関する議論に主体的に関与することで、バイオ医薬品企業の治験依頼者は『ブラックボックス』的なアプローチから脱却し、極めて貴重な臨床試験データヘの直接的なアクセス、管理、および所有権を確保できます。システムの選定を後回しにしてはなりません。基盤となる臨床試験システムについて十分な情報に基づいた選択を行うことは、臨床試験を加速させ、コンプライアンスを高めることができる戦略的な意思決定なのです。
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