Veeva Japan Blog

ライフサイエンス業界のトレンド、2019年トップ6予測

2019年のライフサイエンス業界にインパクトを与え、業界を変革するであろうトレンドのトップ6について、Veevaの専門家集団が知見を共有します。

2018年は、新薬承認に関して記録的な年となり、59種類の医薬品が米国食品医薬品局(FDA)に承認されました。この記録的な数字は、今や新しい標準となりました。今後は、毎年平均40~60種類の医薬品が承認されることが予想されます。

ライフサイエンスにおける画期的なイノベーションのペースからは、業界全体が大きな影響を受けるでしょう。医薬品を開発し上市する方法について、各企業は根本的な変化を求められます。医薬品サプライチェーンの変革からAIのコマーシャル利用にいたるまで、各組織は新しい方法を取り入れ、業務効率をさらに高めるでしょう。

2019年に対するVeevaの予測の上位項目を以下にご紹介します。今年も各企業は、製品開発への投資ペースを緩めそうにありません。

Matt Wallach プレジデント兼共同創業者
プレシジョン・メディシン(精密医療)の成功には、サプライチェーンと市販モデルの根本的な変化が必要。

プレシジョン・メディシンにおいては、ますます多くの企業が画期的なイノベーションを推進し、その市場は2026年までに1,400億ドルを超えて成長するため、従来のサプライチェーンに大幅な変化が求められるでしょう。このような画期的な医薬品は患者に希望を与える一方で、ロジスティクスに関わる複雑な要件も生じさせます。例えばCAR-T細胞の生産では、個別の小規模なバッチでプロセスを繰り返す必要がありますが、そのために、生産の規模を拡大してグローバルな需要を満たすことは困難になる可能性があります。

これに対応して各製薬企業は、温度や時間に細心の注意を必要とする製品の取扱い、保存、流通、管理の新しい方法を生み出すことになります。また、このような治療薬の多くは患者毎に調製されるものであるため、対象の治療それぞれに特有の条件にサプライチェーンを適合させる必要があります。その過程で手順を省くチャンスも存在するため、変化に伴う財政的な負担はある程度緩和されます。

価値に基づく薬価設定に向けた大きな流れが、技術投資と新しいペイメント戦略を促進。

Beneluxa Initiativeやヴァレッタ宣言( Valleta Declaration)など様々な連携の拡大を受け、欧州において薬価引き下げの圧力が高まっており、さらに米国においても同様の要求が見受けられます。そしてこのような流れにより、新しいイノベーションが推進されるでしょう。各企業は例えば、リアルワールド・エビデンス・データへの投資を増やし、患者に対して価値を証明できる薬価設定を展開していくでしょう。

さらに各企業は、Spark社が2018年に実施したような、支払者毎に別々の契約を結ぶようになると考えられます。同社は、1回限りの治療法であるラクスターナ向けに新しい支払・流通モデルを導入しました。そのうちの一形態は直接支払システムで、仲介者を省いてコストの削減に繋がりました。

2019年には、業界が業務効率の改善策を新たに講じることも重要になります。各企業は、人工知能や最新の臨床管理システムなど、より高度なテクノロジーに目を向け、プロセスの合理化と従業員の生産性向上を図るでしょう。

Paul Shawah コマーシャルクラウド担当 シニアヴァイスプレジデント
AI関連への熱狂は、データマネジメントとガバナンスへの注目の高まりへとシフト

私たちは来年、AIドリブンのワークフォースへと移行します。というのも、人工知能が企業のコマーシャルアプリケーション全体の標準機能になるためです。AIは、次に取るべき行動を提案して今後も営業担当者の能力を向上させ続けるだけではなく、より幅広く商業プロセスに浸透し、組み込まれていきます。AIは例えば、マーケティング業務向けのコンテンツ管理において、効能説明の参照を自動化したり、小売販売向けに商品棚の最適な在庫レイアウトを提案したりします。

このようなAIに基づく労働体制は、より多くの企業が適切なデータ基盤を用意するにつれ、現実になっていきます。多くの企業がエンゲージメントとコンテンツを整備してきましたが、データはまだ準備できていません。この点はレポート、アナリティクス、そして最終的にはAIを通じてデータから価値を獲得するうえで、最大の障害となっています。コマーシャルデータウェアハウスは、数十年にわたり業界の進歩を妨げてきました。来年は、データウェアハウスの改善が改めて注目されることにより、データが標準的な方法で整備され、最新の状態が保たれるようになります。その結果、各企業はAIを利用し、インテリジェントな知見を見いだせるようになるでしょう。

Henry Levy  Veeva Vault CDMS担当 ゼネラルマネージャー
データマネージャーが臨床試験データをソース全体から容易に集約し、患者に関する長期的な見通しをリアルタイムで提示するようになる

臨床試験におけるデータソースが増加するにつれ、企業各社は、ステークホルダーとシステムの間におけるデータと情報の流れを合理化することに目を向けるようになります。データ接続の自動化に関する代表的な例としては、航空業界が挙げられます。例えば、フライトの遅延情報は、空港のスクリーンや携帯アプリ、ネットを通してすぐに入手できます。多数の個別システム全体でデータが共有されているため、旅行者は場所や媒体を問わず、最新の情報にアクセスできるのです。

これこそが、ライフサイエンス業界において私たちが向かっている方向です。クラウドにより、臨床試験データマネジメントチームはすべてのデータをリアルタイムに把握し、ステークホルダーと容易に情報を共有できるようになります。そして各組織は、それぞれのデータを1つにまとめ、リスクベースの臨床試験に移行することができます。このような臨床試験では、臨床試験の全期間を通してデータが収集・分析され、患者の最新かつ全体的な状態が把握できるようになります。その結果、治験依頼者、CRO、治験責任医師、規制当局、さらには患者とでさえ、より良いコラボレーションが生まれるでしょう。

Mike Jovanis  Vault Quality担当 ヴァイスプレジデント
メーカーが、業務をデジタル化して製造現場との連携を可能にし、コンテンツ管理の俊敏性を高める。

来年は、より多くの企業が品質業務をデジタル化して連携させ、Quality 4.0を先導するでしょう。Quality 4.0は、高度なデータ分析、人工知能、仮想現実などの新しいテクノロジーと品質マネジメントソリューションを融合させます。この新しいアプローチにより、企業はすべての品質プロセスを連携させて組織全体にエンドツーエンドの可視性を提供し、新しいレベルのパフォーマンスとイノベーションを実現できるようになります。

Quality 4.0の実際が確認できるであろう重要な分野の1つが、製造現場です。より多くの企業がモバイル機器を活用し、適切な情報を適切な作業員に必要なタイミングで提供するようになります。最新のクラウドソリューションは、各種デバイスを横断してアクセスすることが可能であり、人、プロセス、テクノロジーを連携させて、製造業務におけるユーザーのエンゲージメント、効率性、可視性を大幅に高めます。また、デジタルへの移行により、メーカーはリアルタイムでテクノロジーを活用できるようになり、より優れたインテリジェンスを獲得し、より賢明な意思決定を行えるようになります。

Jim Reilly  Vault Clinical担当 ヴァイスプレジデント
FDAで進行中の薬事規制の変更と、テクノロジーの進歩により、医薬品承認までのリードタイムが数年短縮される。

保健当局と業界との間でパートナーシッププログラムが早期に成功したことにより、製品の承認を早めるために現在進行している協同作業が、2019年には促進されるでしょう。Real-Time Oncology Review(RTOR)パイロットプログラムなどのFDAの迅速審査制度により、2018年は新薬、特にアンメットメディカルニーズに対処する品目の承認数が記録的な年になりました。

規制当局と業界の協同作業に基づいたさらなるプログラムが、プロセスの効率化を推進し、患者の生命予後を一変させるような治療法をより迅速に提供できるようになるでしょう。業界にはまた、研究開発業務のパフォーマンスを向上させることによって、このような進歩を継続していくチャンスがあります。来年は各組織が、臨床試験の実施、薬事申請の作成、その他の医薬品開発全体にわたる様々な分野の業務効率を向上させる、新しい方法を見いだしていくと期待されます。

2019年:業界のイノベーションと共に前進

ライフサイエンス業界は2019年も、各プロセスの最適化を続け、製品の開発と上市をより迅速にそしてより賢明に実現していくと考えられます。プレシジョン・メディシンにおけるイノベーション、薬価に対する圧力、人工知能の新しい利用法によって、極めて大きな変化が生じるとともに、各組織は引き続き、記録的な数の画期的な治療法や薬剤を提供していくことでしょう。

Sources
“New Drug Approvals,” Drugs.com, December 2018. See complete list here.
“Global Precision Medicine Market to Reach $141.70 Billion by 2026, Reports BIS Research,” BIS Research, December 15, 2017. See full news release here.
“Emerging Collaboration in EU Drug Pricing and Reimbursement,” by Maude Schmidt and Giovanni Saldutti, Pharmaceutical Executive, August 22, 2018. See full article here.