Veeva Japan Blog

製薬業界におけるメディカル部門の価値とは?|Summit セッションサマリー

インパクト測定と可視化、部署連携の重要性をリーダーが議論

企業では、医薬品の開発から患者さんへ薬剤を届けるまで、様々な部門が連携しています。中でもメディカル部門は、専門的な科学知識と医師とのコミュニケーションを通じて、薬剤の価値の最大化、企業価値の向上に大きく貢献しています 。しかし、その活動の価値をどのように測定し、可視化するかが国内外を問わず、業界共通の大きなチャレンジとなっています 。

2025 Veeva Japan Commercial Summit では、この課題に焦点を当てたメディカルキーノート「 Medical Impact の測定と更なる顧客エンゲージメントに向けて」が行われました。多くのメディカル部門の方々にご参加いただき、このテーマへの関心の高さを感じることができました。

本記事では、メディカル部門のインパクト可視化の重要性と、そのための具体的な取り組みについて、モデレーターを務めた筆者が、業界を代表するリーダーとの議論を振り返ります。

製薬業界全体で、メディカル部門の存在意義や価値が問われています。特に、マネジメント層やコマーシャル、開発といった他の部門からは、「メディカル部門がどのようなインパクトを与えているのか」という問いかけが増えているのが現状です。

メディカル部門の業務量は増加の一途をたどっています。しかし、その活動範囲や他部門との役割分担の線引きが曖昧で、各社で異なるため、業務が複雑化しています。また、メディカル部門の担当者は高いサイエンスレベルを持つ一方、その活動の価値を測定し、可視化する「見せ方」が課題となっています。

メディカルインパクトの測定と可視化:アートからサイエンスへ

「変化」を捉える重要性

セッションでは、メディカル部門の価値を語る上で、「変化」という言葉がキーワードとして挙がりました。活動そのものがゴールではなく、その後に何が起きたか、どのような変化をもたらしたかを捉えることが重要で、例えば、ランチョンセミナーや論文発表といった活動の後に、医師の意識や行動にどのような変化があったのかを分析し、評価することで、活動の質を向上させるための教訓を得ることができます 。この「変化」は社内外のステークホルダーに対する説明責任を果たす上でも不可欠です 。「活動そのものがゴールではなく、その後に何が起きたか、どのような変化をもたらしたかを捉えることが重要だ」との意見も出ました。

メディカルの活動を「アート」で終わらせないためには、再利用性と再現性を意識した活動が不可欠です。創薬から薬の開発までは長い時間がかかるため、活動の記録を次の世代に残す形を意識することは、製薬企業のコアコンピタンスとも言えます。

測定指標の多様性

メディカル部門の活動は、コマーシャル部門の売上のように単純な数字で測ることは困難です 。しかし、メディカルが目指す価値の定義によって、測定指標は多様になりうります。

例えば、メディカルの訪問価値が「企業の評価を高めること」であれば、医師の評判の変化を指標にすることができます 。また、「製品の認知度向上」をゴールとする場合は、医師の意識変容を指標とすることも可能です 。さらに、医師が学会で自発的に発表してくれたり、論文の質や量、学会での露出度などを指標にしたりすることも一つの方法です。

部門間コラボレーションの課題と解決策

「ファイアウォール」と顧客視点の重要性

製薬業界では、メディカルアフェアーズの独立性を保つための「ファイアウォール」という概念が重視されてきました。しかし、医師から見れば、同じ製薬企業の人間であるため、「なぜ(社内で)情報を共有しないのか」という不満が生じることがあります。

セッションでは、顧客である医師の視点に立ち、「チーム医療を支えるために部門間の連携が不可欠だ」との声も上がりました。。多職種連携が進む現代において、情報交換を密に行い、地域の治療・施設の課題を解決していくことが求められています 。

異なるKPIとマインドセット

部門間のコラボレーションを阻む最大の要因の一つは、部門ごとの KPI の違いです。
この課題を解決するためには、まずマインドセットを変えることが重要です 。「自分たちの部門の考えがすべてだ」という発想を捨て、企業全体として「製品を通じてどのような価値を提供するか」という大きな目標を共有することが欠かせません。
部門ごとや国ごと、グローバル組織など、違いがあることを認識することから始まり、目標が一致しないことがある前提で、連携を進める必要があります。

未来の組織変革へ:人とデータの視点から

メディカル部門がその価値を最大限に発揮するためには、組織文化の変革が不可欠です 。「データ」の力を最大限に活用し、テクノロジーを導入して新たな気づきを得ることで、行動を次のステップに引き上げる必要があります。システム的な準備と同時に、人同士の連携、「文化づくり」も重要です。特に、マネジメント層が他部門の活動に興味を持ち、サポートすることで、部門間の連携が強化される、との意見も出ました。

メディカル部門は、医師や患者さんのアウトカム改善という最終目標に向けて、サイエンスのリーダーシップを発揮することが期待されています 。

そのためには、まずは社内に対して、日本の商習慣や薬価制度、他社のメディカル戦略といった違いを明確にした上で、メディカル戦略をドキュメントという形で示し、その実行プランの進捗を管理するなど、ビジネスにおけるPDCAを回すことが不可欠です 適切な活動報告や、後から分析可能な定量的な活動データも必要となります。

メディカル部門のメンバーには、デジタルや世の中のトレンドへの興味、適切な報告、そして手順に沿った業務遂行といった基本的なマインドセットに加え、ビジネスアキュメン(ビジネス感覚)を今以上に高めることが求められます。これによって、チーム全体のコラボレーションがより円滑になるはずです。価値を可視化し、部門間の壁を越えた連携を深めることは、患者さん中心の医療への貢献や、企業の成長に欠かせません。


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